論説

注目される司法の判断 令状ないGPS捜査

  • 0
  • LINEで送る

 令状なしに衛星利用測位システム(GPS)端末を使った警察捜査の違法性が争われた窃盗事件の上告審が結審した。下級審の判断は分かれており、来月15日に大法廷が初の統一判断を示すことになる。

 大法廷で審理されたのは、関西を中心に車両盗などを繰り返したとして窃盗罪などに問われた男の事件。一審大阪地裁判決は、GPS捜査に「重大な違法がある」と指摘。得られた関連証拠を不採用とした上で、起訴内容を認めた被告の供述などから懲役5年6月とした。二審大阪高裁は「捜査に重大な違法はなかった」として被告の控訴を棄却した。

 争点は、重大なプライバシー侵害があったかどうか。弁護側は弁論で「知らずに監視される捜査は受け入れられない」などと改めて違法性を主張、立法措置も求めた。一方、検察側は「尾行や張り込みによるプライバシー侵害を超えるものではなく、令状が必要な強制捜査に当たらない」と反論。「百歩譲って強制捜査と解釈されても、捜査後に令状を提示することは許される」と述べた。

 令状なしGPS捜査の違法性を巡っては、各地の裁判所で判断が分かれている。昨年12月、福井地裁は適法としたが、福井県警が捜査資料にGPS端末を使ったと明記しなかった点を批判。一方、東京地裁立川支部は違法との判断。だが、証拠採用は認めた。高裁レベルでも、名古屋高裁が昨年6月に違法としたのに対し、広島高裁は昨年7月に令状は不要とするなど判断が分かれる。

 GPS捜査について警察庁は、令状のいらない任意捜査での運用が可能との姿勢は崩していないが、各地の訴訟で違法性の判断が分かれたのを受け、昨年9月には令状取得も「一つの適切な方法」と全国の警察に通達。千葉県警は昨年、捜査に支障がなくなった段階で本人に端末使用を伝えることなどを条件に全国で初めて令状を取った。

 日弁連は、GPS捜査の要件や手続きを定めた新たな法律をつくり、裁判所の出す令状に基づき行うべきだとする意見書を警察庁に提出。「警察監視社会をつくる」と警鐘を鳴らす学識経験者もいる。犯罪捜査が困難さを増す事情もあり、大法廷の判断によっては、捜査の在り方に影響を与えるのは必至だ。