論説

運用拡充の前にカード普及を マイナンバー導入から1年

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 一昨年に始まったマイナンバー制度。ことしから確定申告に記載が必要になり、日本年金機構の年金相談、照会に利用できるようになるなど、徐々に運用が広がってきた。しかし、顔写真付きで身分証明に使えるとPRしたマイナンバーカードの普及率は低迷したまま。課題は山積している。

 マイナンバー導入は、公平な税負担や生活保護の不正受給防止、事務負担軽減による行政の効率化、公的機関での手続きの簡素化などが目的に挙げられた。いずれも行政側のメリットが中心だが、今後は市民生活に役立つ利用が検討され、一つずつ実現させていく方向。

 現在、総務省はマイナンバーカードを使ってコンビニで住民票の写しなどを受け取れる制度づくりを自治体に働き掛けている。また図書館など公共施設の利用カードや、公立病院の診察券に使えるよう、システム開発を進めている。将来的にはクレジットカード、キャッシュカードに至るまで、「ワンカード化」も視野に入れる。

 だが、カードの取得者は、いまだ1割に満たないという。国民は通知カードは受け取っても、写真撮影など、わずらわしい手続きをしてまで、マイナンバーカードを作る必要を感じていないのが実情だ。有効期限があり、10年ごとに顔写真を撮り直さなければならない(20歳未満は5年)のも普及しづらい理由。運用を広げるより、カードの取得率向上を優先しなければならないのは明らかで、そのためには地方自治体のいっそうの努力が不可欠になる。

 高齢者に対する配慮に欠けるとの指摘もある。身分証明としてカードが不可欠になった時、自力で取得申請や受け取りができない人はどうすればいいのか。年金生活の高齢者が、「パソコンかスマホを持っている人間を対象に設計されていて、年寄りのことを考えていない」と憤っていたのを思い出す。

 現時点では国もできるところから、慎重に運用拡充を進めているように見える。地方自治体や民間企業に働き掛け、「持っていれば便利なカード」として普及を目指す。カードが国民が常に携帯するツールとして定着するのかはまだ不透明だが、運用法の充実は、普及率とのバランスを考えながら進めていかなければならない。