論説

少子化、過疎化対策に一石 大多喜町の学校給食費無料化

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 小中学校給食費の完全無料化を大多喜町が打ち出した。子育て支援による移住定住につなげるためで、今年1月から中学校はすでに実施し、2019年度までに小学校にも枠を広げる方針だ。対象は児童・生徒約550人で、必要な予算を計約2800万円と見込む。少子化や過疎化にあえぐ自治体は財源をどう有効活用すべきか。この問いに一石を投じる。

 学校給食法は施設整備費や人件費を学校設置者、それ以外を原則保護者の負担と規定する。ただ、近年、人口減少への危機感などを背景に各自治体が独自の判断で給食を無料にする例が増えつつある。

 全日本教職員組合が1032区市町村・広域連合から回答を得た調査(2015年実施)では、全小中学生に対する全額補助は44市町村を数える。

 その一つ、栃木県大田原市。昨年実施の保護者向けアンケートで「継続」を望む声は全体の9割を占めた。「家を建てようと決めたポイントになった」との意見も寄せられた。月額4千円台だった給食費は「習い事」や「進学のための貯蓄」に充てられている実態も浮かび上がった。担当課は「子育て支援として手応えはある」と話す。

 給食費を全額公費で賄えば、児童・生徒の家庭は一律に恩恵を受ける。分かりやすい施策で保護者への訴求力が高いのはうなずける。一方、受益者負担の観点から慎重論があることにも目を向けなければならない。「もののありがたみがなくなる」「食べ残すのでは」。教育委員からの懸念を受け、和歌山県日高川町は昨年4月、給食費の完全無料化を見送った。その後、代替案として3万円の地域商品券を子育て世帯に配り、教育費の負担軽減と地域振興の一挙両得を狙うことにした。

 県内では前例のない施策を始める大多喜町。この数年で一段と児童・生徒数は減少し、学校の統廃合も相次いだ。そこで、飯島勝美町長は「町の柱は人材育成」と決断。限られた予算の使い道で、人口の呼び込みや張り付きに結び付く可能性があると見定めた。

 効果は未知数だ。しかし、同じ悩みを抱え、足踏みをしていられない自治体はほかにもあるはず。地域経営を立て直すに当たり、トップが講じる施策が問われる。