論説

地域社会の衰退に歯止めを 伝統行事休廃止の現実

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 地域に根差し、世代を超えて受け継がれてきた祭りや年中行事、芸能など、都道府県が指定した無形民俗文化財の存続が、少子高齢化で危機を迎えているようだ。

 共同通信の調べでは、継続的な実施が難しくなり休廃止されたものが、千葉を含む20県で計60件。うち廃止は4県の計6件で、県内は白井市の神楽など3件あった。過疎や少子化、若者の都市部への流出などによる担い手不足が背景にあるという。伝統行事の衰退は、地域共同体の弱体化の現れでもあり、深刻な現実として直視する必要がある。

 無形民俗文化財は市町村や都道府県が指定。特に重要と認めたものは国が重要無形文化財に指定し、自治体と国が伝承に必要な活動資金を補助するなどして保護している。2016年に「山・鉾(ほこ)・屋台行事」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された18府県33件の祭りは、すべて国指定だ。

 都道府県指定の伝統行事の継続が困難な実態が浮き彫りになったが、市町村指定の場合はより零細な行事が多く、休廃止の事例が多数あるとみられている。切実な状況はいかばかりだろうか。

 地域社会は大きく変容しようとしている。高齢化と過疎によって耕作放棄地の拡大が年々続く農山村部が象徴的だ。同時に、地域を支える主役がお年寄り中心となれば、小規模な行事を維持していくにも、一人一人の負担は大きくなって制約も出てくるのは当然だ。

 なぜ若者が育った地域を離れていくのだろうか。しがらみを嫌ったり、都市へのあこがれは、今に始まったことではない。若者が住みやすく、気軽に行き交うことのできるように地域共同体の在り方も、もう一度見直してほしい。

 学校で伝統行事に親しむ取り組みをしたり、都市部など地域の外から若者を呼び込む試みも進んでいるという。伝承のためには従来のやり方にこだわってばかりもいられない。

 祭りや年中行事は、巡る季節をことほぎ、無病息災を祈り、生活に潤いを与え、平凡な日常から解放してくれる。若者たちにその魅力を知ってもらうことが、地域社会の衰退に歯止めを掛けることにつながる。