論説

生活の足、欠かせない支援 高齢運転者の交通事故

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 高齢の運転者による事故が各地で目立っている。政府は、「喫緊の課題」として事故防止対策への取り組みを指示した。来年3月には、75歳以上のドライバーに対する認知症検査の強化を柱とした改正道交法も施行される。高齢運転者の増加が今後さらに見込まれる中、安全運転の徹底と運転技能レベルの自覚が必要だ。また、運転免許を自主返納した人の生活の足を確保するため、自治体、地域社会による支援が欠かせない。

 この数カ月の間に集団登校の児童の列に軽トラックが突っ込んだり、病院敷地内で車が暴走して犠牲者を出す事故が全国で相次いだ。県内でも高齢者が加害者、被害者になった事故や、ひき逃げ事件が起きている。

 年齢に関係なく、いつまでも自動車の運転を続けられ、元気な人生を送れるのが理想だ。しかし、身体機能や認知・判断能力の低下は避けがたく、痛ましい事故は減らさなければならない。運転に自信がなくなった人が運転免許証を自主返納すれば、事故防止策の一つになるはずだ。

 県警のまとめでは、今年、運転免許証を自主返納した75歳以上が10月末時点で約4726人と、昨年の4655人を抜き年間最多を更新した。自主返納者に対しては、11月15日現在で14市町と142の企業が、バスやタクシーの運賃割引などを実施している。

 政府も「社会全体で高齢者の生活を支えていく」として、自主返納した人たちへの移動手段確保の検討を進めるという。特典の充実や公共交通機関の整備など、運転をやめざるを得ない人への配慮が求められる。

 一方、75歳以上の運転免許保有者は10月末で22万5千人。全国で6番目に多く、新規返納者を上回るペースとなっている。公共交通機関が不便な所では、車がないと買い物や通院など生活への支障が生じ、切実だ。免許を手放せないという高齢ドライバーの事情は軽視できない。

 高齢者による交通事故件数・死者数はここ数年ほぼ横ばいだが、全体に占める割合は上昇傾向にある。加齢によるマイナスイメージは何とも切ないが、若い世代の無謀な運転や壮年層の慢心も自戒すべきだ。高齢者自身の心掛けと、すべての年代のドライバーの思いやりが事故防止につながる。