灯油や水道検針にIoT 割安通信広がり身近に

IoTを利用した灯油配送の仕組み

 さまざまな機器をネットワークでつないで情報をやりとりする「IoT(モノのインターネット)」が、暮らしの身近な分野に広がってきた。異業種からの参入で割安な通信システムが普及したことが背景にあり、灯油の補充や水道料金の検針といった家庭向けサービスの活用が過疎地や離島を中心に進んでいる。

 ▽見守り

 北海道新篠津村で昨年末、低価格通信を使った灯油配送サービスが導入された。寒冷なこの地域では各家庭に灯油タンクが設置され、定期的な補充が欠かせない。タンクのふたの裏にセンサーを取り付け、1日数回、灯油の残量データを地域のJAに自動送信する。JAが最適なタイミングで各家庭への配送を手配する流れだ。

 これまで各家庭の灯油がどの程度減っているかは地域を巡回する配送車のドライバーの勘に頼り、非効率な面があった。新篠津村と同様の配送サービスは札幌市でも試験的に始まっており、地元の灯油配送会社「アポロ販売」の担当者は「人手不足でドライバーの負担が大きくなっている。市内全域で導入を進めていきたい」と話す。

 兵庫県姫路市の離島、西島では、検針員が船で渡って調べていた各家庭の水道使用量を、データ通信で簡単に把握できるようになった。日々の使用状況を確認することで、1人暮らしのお年寄りらの見守りにもつながっているという。

 ▽年100円

 こうしたサービスを可能にしたのは「LPWA」と呼ばれる低価格通信だ。高速通信には不向きながら、小型電池で数年間使えるほど消費電力を低く抑えられ、広域で接続できる利点がある。通信機器は使い捨てできるほど安価だ。IoT時代を見据え、通信大手以外からも参入が近年相次いでいる。

 新篠津村の灯油配送や姫路市の水道検針の通信技術を手掛けるのは京セラの子会社、京セラコミュニケーションシステム(京都市)だ。通信料が「年100円」の格安通信サービスに昨年乗り出し「2020年までに人口カバー率99%を目指す」(黒瀬善仁社長)と高い目標を掲げている。

 ▽覇権争い

 総務省の17年版情報通信白書によると、世界全体でLPWAに対応した機器は16年の2800万台から21年には3億8千万台超へと10倍以上に増加する見通しだ。国内勢ではソニーが高速移動中でも利用可能な無線通信の開発を進め、遊覧船の発着システムへの応用を検討。市場拡大とともに、多様な担い手の競争によるサービス向上が期待されている。

 挑戦を受ける立場の大手通信会社も気を引き締める。関係者は「IoT通信の覇権をどこが握るかはこれから数年で決まる」との認識を示した。


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