数字は正直 「成田収平 スキーの味方の見方」 

ジャンプ男子ラージヒルで、2回目の飛躍を終え、観客席に手を振る小林陵侑=平昌(共同)

 男子ラージヒルが実施された17日、ジャンプ台付近の風はあまりなく、これまでと比べると非常に公平な条件でした。風にもてあそばれたノーマルヒルとは正反対です。こうなると結果にはワールドカップ(W杯)の今季の力が反映されます。

 個人総合1位のストッフ(ポーランド)が1回目135メートルで1位、2回目136・5メートルで3位と安定した飛躍をそろえ、前回ソチ冬季五輪との連覇を果たしました。ノーマルヒルを制したウェリンガー(ドイツ)が2位になりました。上位5人がW杯個人総合6位までの選手でした。数字は正直です。

 さて、日本勢です。W杯個人総合8位で私も期待した小林潤志郎は、いいところがなく24位に終わりました。以前のコラムで紹介しましたが、彼の良さは踏み切りで体を起こしすぎず、飛び出した後にうまくスキーに乗っかっていく感じで距離を伸ばすところです。ところが今回は、それがない。自分のポジションをつかみきれていない。その不安があるのでしょう。飛行曲線をうまく遠くまで引っ張っていけない、という感じでした。

 葛西紀明は2回目進出を逃しました。私がノルディック複合の監督として参加した前回のソチ五輪のラージヒルでは銀メダルを獲得しました。あの時の日本のジャンプ陣には葛西を中心にして「メダルを取るぞ」という、ピリピリした空気があったことを覚えています。団体も銅メダルでした。

 今回、私はチームの外から眺めるだけで個人的な印象になりますが、ジャンプチームからはアットホームな雰囲気を感じ「メダルを取りにいこう」というところが見受けられません。まあ、今季のW杯の成績を見ると仕方ないのかもしれませんが…。

 ただ、この空気をうまく利用したのが、潤志郎の弟、陵侑だと思いました。ノーマルヒルの7位入賞に続いて、10位に食い込みました。

 葛西と同じ所属先です。葛西がピリピリしていないから、陵侑も五輪ということを意識せず、いつも通りのジャンプをしているように見えます。

 私が全日本スキー連盟で強化を担当していた時、それほど実績のなかった陵侑を2016~17年のまるまる1シーズン、W杯に派遣しました。次世代を担うであろう選手を見つけて、育てる。そのためには経験を積ませないといけないという考えでした。そのシーズン、1度も1桁順位に入れませんでした。ちょっと遅れましたが、この五輪で持てる力の一部を発揮してくれたとすれば、うれしい限りです。


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