アンチヒロインへの挑戦 「はいからさん」を語る 

「劇場版はいからさんが通る 前編~紅緒、花の17歳~」(C)大和和紀・講談社/劇場版『はいからさんが通る』製作委員会

 えび茶のはかまにブーツ姿の花村紅緒が主人公のラブコメ漫画「はいからさんが通る」のアニメ映画が公開される。作者の大和和紀さんが、連載終了から40年たっても愛される理由や、型破りなヒロインの誕生秘話を語った。

 「はいからさん―」は、1975~77年に「少女フレンド」で連載。「着物にブーツの組み合わせがかわいいなという発想がきっかけです。歴史物は編集部の受けが悪いんだけど、『大正時代のはいからさんを描かせてほしい』と押し切りました」と振り返る。

 紅緒は家事全般が苦手で、酒を飲んで大暴れしたり、果ては監獄に入ったりする“アンチヒロイン”。「少女漫画のヒロインはごく普通の女の子が多かった。作家として、『この主人公はあなたかもしれない』というコンセプトに飽きていたんですね」と解説する。

 少女漫画のセオリーを無視するかのように、作中にはこれでもかとギャグがちりばめられているが、「骨子は王道なんです。恋人が行方不明になったり、記憶喪失になったりしても初恋を貫く…。ラブロマンスがしっかりしているからこそ、ヒロインの破壊というチャレンジができた」。

 編集部の心配は杞憂に終わり、不動の人気作に。紅緒に思いを寄せた2人の美男子、伊集院忍少尉と青江冬星編集長は女性ファンの人気を二分した。

 「はいからさん―」連載時には男性中心の職場だった出版社に、現在は多くの女性が働いている。大和さんは「『はいからさん―』の読者だったという女性編集者に会うと、必ず『美形の編集長がいない。どうしてくれるんだ』と言われるんです」と笑った。

 「劇場版はいからさんが通る 前編~紅緒、花の17歳~」は11日公開。


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