山の多様な魅力を紹介 「百名山」の深田久弥ら 

手作りの手袋(手前下)など田部井淳子さんの登山用具=東京・世田谷文学館

 山を愛したアルピニストや文学者、建築家らの作品を通して、山の多様な魅力を紹介する展覧会「山へ! to the mountains展」が、9月18日まで東京・世田谷文学館で開かれている。

 目玉は、山岳紀行の名作「日本百名山」を残した深田久弥のコーナー。

 ヒマラヤ研究にものめり込み、蔵書の多さに困り果てた妻が庭先に建て、本人が「九山山房」と名付けた書庫兼書斎の写真を愛用品と共に展示、深田の知の源泉を垣間見ることができる。

 1975年にエベレストに女性で初めて登頂し、昨年亡くなった登山家田部井淳子さんは山を「日常」のものにしたという視点で紹介。「食べ胃」と名乗ったという田部井さんは、山でも食にこだわり、遠征先に抹茶セットを持参し、野だてを楽しんだ。このほか、車のカバーで手作りした手袋など、親しみのわく展示で構成する。

 フランスの建築家ル・コルビュジエの弟子として知られる建築家吉阪隆正も、山を愛した一人。雪下ろしが不要なドングリ形の「野沢温泉ロッジ」などの模型や構想図には、考え抜かれた山岳建築の美しさがある。

 登頂だけではない、山の楽しみを伝えた植物学者田辺和雄の足跡や、単独行を描いた漫画「孤高の人」の作画を担当した坂本真一さんの原画なども展示。山と向き合ったエキスパートたちの軌跡を通して、山の楽しさに触れることができる。入館料は一般800円。9月18日を除く毎週月曜休館。


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