歌い継ぐアイヌ姉妹映画に 原発事故を機にユニット 

ドキュメンタリー映画「kapiwとapappo アイヌの姉妹の物語」の一場面

 アイヌ民謡を歌い継ぐ北海道釧路市の姉妹ユニットに密着したドキュメンタリー映画「kapiwとapappo アイヌの姉妹の物語」が完成し、各地で上映されている。東京電力福島第1原発事故で子どもの健康被害を心配した姉が東京から故郷に戻り、ユニットを組むまでの2人の葛藤と絆を描いている。

 東京でアイヌ民族のウポポ(歌)の歌手として活動してきた床絵美さん(43)は、事故を機に3人の子どもを連れて釧路市のコタン(集落)に里帰りした。妹の郷右近富貴子さん(41)はコタンで家族と暮らしながら、阿寒湖の観光船で歌い、アイヌの楽器ムックリを演奏する日々を過ごしていた。

 歌や演奏が生活の手段や一部となっていた2人がユニットを結成することになり、衝突しながらも練習に励み、ステージに立つ姿を追った。

 姉妹は2月、斜里町でライブを開き、カモメの母心を歌った「カピウ ウポポ」など数曲を披露。床さんは、過去から未来へ歌い継がれるウポポの中に「昔の女性たちの気持ちも生きる」と真剣そのものだった。郷右近さんは「姉とのウコウク(輪唱)が楽しい」と声を弾ませた。

 床さんの歌に感動し、撮影を始めた佐藤隆之監督は「肩肘張らず、民族のアイデンティティーを引き継いでいるのが姉妹の魅力。アイヌの魂を感じてほしい」と話す。

 昨年11月の東京を皮切りに、3月中旬から大阪市西区の「シネ・ヌーヴォ」、4月に札幌市中央区の「シアターキノ」で上映。横浜、京都、神戸、東京でも今後上映する予定だ。問い合わせは佐藤監督、メールアドレスpeach.sato7@gmail.com。


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