南極観測隊、温暖化探る 海面上昇、氷河から予測 

氷の壁が続く南極・白瀬氷河の突端。右側はリュツォ・ホルム湾=22日(小型無人機から・共同)

 【昭和基地共同】昭和基地のあるリュツォ・ホルム湾内で、第58次南極観測隊が、氷河の解ける速度から地球温暖化の影響を探る調査を進めている。海水温の上昇に伴い、氷河が解ける速度が増している可能性があり、担当者は「将来的な海面水位の上昇について、より正確な予測値を出したい」と意気込んでいる。

 調査しているのは湾の奥の「白瀬氷河」が流れ込んでいる場所。南極大陸に堆積し、長い年月を重ねて固まった氷や雪が、1年に約2キロの速度で湾内にせり出している。

 この湾は厚い氷に閉ざされていることが多いが、昨年4月に大半の氷が沖に流出。観測船しらせが湾内に進入できたことで調査が実現した。

 近年、湾の沖の海水温の上昇がみられるといい、調査チームのリーダー、極地研究所の田村岳史准教授(37)は、湾内にせり出した氷河の下に温かい海水が流れ込むことで、氷河が解ける速度が増し、地球全体の海面水位の上昇につながる可能性を指摘している。

 今回、湾内で水温を調べたところ、水深900メートル付近で零度を上回っていることが確認され、田村准教授は「予想通り温かい水があった」と、自身の予測に手応えを感じている。

 調査チームは白瀬氷河の突端から約50キロ上流に、氷河の厚さを測る機器を設置したほか、2月上旬までに湾内約40カ所でも水温などを調べる予定で、田村准教授は「より正確に、海面水位上昇のシミュレーションをしたい」と話している。


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