2017年3月18日 09:00 | 無料公開
東京電力福島第1原発事故の避難者による集団訴訟で、国と東電の責任を認めた17日の前橋地裁判決は、津波で原発が危機的状況に陥る恐れがあったのに安全対策を怠ったとして、両者を厳しく批判したものだ。法的責任を明確にした画期的判断といえる。
最大の注目点は、巨大津波の到来を予測できたかどうかだった。国と東電は、原告側が予測の根拠にしていた政府の長期評価について「専門家の間でも異論があり、科学的知見が確立していなかった」として、巨大津波の予見可能性を真っ向から否定した。
だが判決は、長期評価を「合理的」と評価し、予見可能性があったと断言した。判決は事故の被害が甚大になる点に再三言及しており、こうした原発の特異性を考慮したのは間違いない。さらに国に対しても「原子力災害の未然防止が強く期待されていた」として、責任は補充的なものではなく東電と同等と結論付けた。
東電や国の責任の所在が曖昧なまま賠償や復興が進められる構図に、不満ややりきれなさを感じる被災者が同種の訴訟を多数起こしている。運転差し止めが命じられるなど原発に対する司法の姿勢は厳しさを増しており、今回と同様の判決が続けば、再稼働に突き進む国と電力会社の姿勢や原子力規制の在り方に影響を与えるのは必至だ。