魚食堂

写真・題字:安原直樹


終わりに“涙酌” タイの桜寿司

  • 0
  • LINEで送る

タイの桜寿司

 始まりがあれば、終わりは必ずやってくる。記者人生で最長(6年4カ月)、最多連載(76回)の本欄も終わりを迎えた。

 振り返れば、三方を海に囲まれた房総半島に暮らし魚料理を書くことで、新たな発見が多々あった。

 古今東西の食通の名著にアイデアをもらった。ブリア・サヴァランの『美味礼讃』から「新しい御馳走の発見は人類の幸福にとって天体の発見以上のもの」の一節を引き、アジの一夜干し(第3回)を紹介した。

 食の巨人・北大路魯山人の『魯山人味道』にあった「まぐろは酒の肴として好適ではない」に盾突いて、マグロのサラダ仕立て(第30回)を試した。時代小説家・池波正太郎の食卓風景をまね、小鍋立てアユのわた蒸し焼き(第8回)に舌鼓を打った。どれもみな懐かしい。

 料理に合わせ、酒も厳選した。日本酒はむろん、バーボン、芋焼酎、紹興酒など、最適の肴により格段の美酒となった。

 身近な多くの読者に声を掛けられた。「この前の料理作ったら、うまかったよ」「次は何?」。感想と質問が執筆の励みとなった。第1回が外房の王様の味マダイの塩焼きならば、最後もマダイの桜寿司で締める。またいつの日か再会できることを願って“涙酌”。

 【材料(2人分)】
タイ半身、酢飯1合、桜の葉塩漬け8枚、桜の塩漬け適宜、昆布20センチ。

 【作り方】
(1)タイは、2~3ミリの削ぎ切りにする。
(2)(1)に軽く塩を振り、酒で湿らせた昆布ではさみ冷蔵庫で一晩置く。
(3)水に濡らした型に酢飯を半分詰め、桜の葉の塩漬けを敷き、上に残りの酢飯を詰める。
(4)(3)に(2)を並べ、塩抜きした桜の花を飾る。

   =おわり