魚食堂

写真・題字:安原直樹


原点回帰の香気 鯛飯

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鯛飯

 新聞記者の好奇心でもって、これまでさまざまな街を訪ねた。日ごろの取材は十分な下調べをするが、休日の旅は余分な知識を仕入れない。自らの視覚、嗅覚を主に五感を信じて隠れた名店を探した方が、偶然性が愉快である。

 だいたい客の舌をうならせる店は、構えからして清潔だ。夏は打ち水、冬は落ち葉を掃除し、自然と店に吸い寄せられる。席に着けば、給仕さんが水とメニューをさっと持ってきて、ころ合いをみて、注文を聞きに来る。一分のすきもない。それゆえ、料理も期待できる。

 山形・米沢市のステーキ店『東洋館』もそんな一店。リーズナブルな価格で米沢牛を提供する。毎回、1枚ずつ頼むヒレ、サーロインステーキと、地元産の渋めの赤ワインの組み合わせは、肉汁の甘みを一段と引き出す。

 さて、今回は鯛飯(たいめし)。本欄の1回目が本格の塩焼きだったゆえ、一種の原点回帰である。長旅から帰宅すると、人は言う。「やっぱりわが家が一番」。記者もそう思う。

 「ディテール(細部)にこそ神は宿る」という言葉がある。鯛は炊く前に丁寧に焼いておくことで、香気が立つ。食欲をそそられて、わが家はめでタイと“初春酌”。

 【材料(2人分)】

 鯛1匹、米2合、だし汁200ミリリットル、調味料A(酒大さじ1、薄口しょうゆ大さじ1/2、塩小さじ1/4)、ショウガ適宜。

 【作り方】

 (1)鯛はウロコ、ワタを取り、塩少々を振って焼く。
 (2)炊飯器に米、調味料Aを入れただし汁を注ぎ、(1)をのせて炊く。
 (3)炊き上がったら骨を取り除きさっくりと混ぜる。
 (4)器に盛り、千切りショウガをのせる。