私の小倉台日記

■プロフィール
勝山朗子(かつやま・あきこ)
  小説家、エッセイスト。房総文化懇話会会員。文学サークル『槙』同人。共著に『千葉児童文学選集』『槙・文学選集1・2・3』『何がそんなに…』など。千葉市在住。


朗読劇の楽しさ

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 「次回は衣装をつけてやってみましょう」。先生の言葉に私たちは顔を見合わせた。何となくうきうきする。

 私たちは朗読アンサンブルの会員であって、六月に東京墨田区で全国的な発表会がある。

 「千葉の会」の出し物は『鬼神のお松』。おばあさん役が六人出場する。それも現代のおばあさんではない。荒木又衛門が登場する時代だ。

 私は白髪ではあるし、このままで十分におばあさんだ。本当は腰が痛いのだから、無理に痛くない振りをすることはない。自然のままでいい。

 前回の練習のとき、お仲間の一人が大きな紙袋を二つ持ってきて、中から色いろな衣装を出して見せてくれた。

 「わぁ、こんなに。まぁ、大変だったでしょうに」と私たちは歓声を上げた。その人は事もなげに「全部、母のものですから。あるものを持ってきただけですから」と言う。お母さまは八十四歳、私といくつも違わない。中には値札の付いているものもあり、ほとんど新しそうなものばかりだ。

 みんなそれぞれに自分に合いそうなものを手に取り、お互いに「似合う、似合う」と言い合って楽しんだ。私が選んだポンチョは紺色の絣でキルティング地である。

 「これ気に入ったわぁ」と身に付けると「それは勝山さんにとイメージしていたの。似合いますよ」と言ってくれる。

 私も亡き義母のエプロンやカーディガン、手拭いやブラウスなどを持参したから、広げて見せたりした。もんぺを持ってきた人もいて、大体六人のおばあさんが出来上がった。

 その、おばあさんたちが「百万遍の法会」で集まってくる。それぞれに座布団を抱えている。世話役のおばあさんが長く繋がった大きな数珠を持ち、座ったおばあさんに手渡していく。口々に「南無阿弥陀仏」を唱える。

 おばあさんたちは話したくて仕方がない。昔あった本当の話を。

 それは「鬼神のお松」の物語り。

 「鬼神のお松」という女は、そりゃあ悪い女だ。子分を七十四人引き連れた盗賊なのだ。峠の山道を通る人を騙して金銭を奪うのだが、相手によって仕掛ける手が違う。お坊さんに出会うと身に上話を。若い男なら恋路を。歳のいった男なら「あいたたたた…」と癪を仕掛ける。

 それがまた「背中そそげるくらいのいい女」だから男どもは、みんなころりすってん、と参ってしまう。

 私たちはお腹から声を出すことを心がけている。六月の本番を目指して、舞台女優になったつもりで練習をしている。