御木平輔のミュージカルランド

■プロフィール
 御木平輔(みき・へいすけ) 音楽専門誌「ミュージックフォーラム」編集代表。主な著書は『ミュージカル手帳』(心交社)、「宝塚歌劇名作・傑作全演目事典平成編(講談社)、「新ミュージカル手帳」(心交社)、「ひばり模様」(七賢出版)など多数。南房総市千倉町のかやぶき屋根の家に住んでいる。


舌巻く井上芳雄の喜劇センス ナイスガイinニューヨーク(東宝) 【御木平輔のミュージカルランド】

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(左から)石野真子、高橋克実、井上芳雄、間宮祥太朗

 これはミュージカルではない。でも『マイ・ウェイ』『ニューヨーク・ニューヨーク』などの世界的ヒットを放ったフランク・シナトラの代表曲が生演奏され、しかも井上芳雄を筆頭に出演者全員が歌い踊るという趣向が年末にピッタリだ。脚本は「おかしな二人」「グッバイ・ガール」などを書いた米演劇界の喜劇王ニール・サイモン。この喜劇王の処女作(1961年初演・63年に映画化/本人の体験談がたっぷり仕込まれた脚本)に挑むのが、日本のコメディー界の鬼才福田雄一だ。二枚目俳優や美人女優の裏の顔を引き出す演出が持ち味で上演台本も担当。日米の喜劇王と鬼才のタッグが、どのような化学反応を起こすか、観てのお楽しみ!

 ≪60年代のニューヨーク。陽気なプレイボーイの兄(井上芳雄)と生真面目で内気な弟(間宮祥太朗)が、ひょんなことから家族や恋人をも巻き込んで大騒動に…≫

 井上はベタなコメディーをも軽々とこなし新境地開拓か。当意即妙にアドリブを繰り出し客の笑いを誘って場を盛り上げる。またシナトラの名曲♪『カム・ブロー・ユア・ホーン』(“人生を楽しめ”という意味で脚本の原題でもある)を井上独自の解釈で歌い踊る場面はミュージカル俳優の真骨頂を存分に魅せる。

 弟役の間宮、一幕は真面目一本やりだが、二幕目に入るとキャラクターが逆転し面白さが倍増する。兄弟のキャラが反転するのも、この芝居の見どころの一つだ。兄の恋人の一人で歌手志望の吉岡里帆は初舞台で初々しい。たどたどしく歌うアカペラも一興だ。また女優志望の愛原実花のおばかキャラも一見の価値あり。兄弟の母親役は石野真子。固定電話(当時はスマホなどありゃしない)を巡る石野のぼけ振りはさすが。そして兄弟の親父役はカツラ(トランプ次期米大統領を思わせる髪型)をかぶった高橋克実。頑固一徹な父親像が一転する瞬間が見せ場だ。せりふとアドリブの境目を感じさせないハチャメチャぶりはスゴイ。

 ラストは全員が歌い踊り大団円を迎える。ニール・サイモンの真髄である家族愛、兄弟愛、人間愛がほのかに香る。

 【メモ】12月27日まで有楽町のシアタークリエで上演中。問い合わせは東宝テレザーブ、電話03(3201)7777。



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