銀幕への誘い


北野監督の小ネタ満載 龍三と七人の子分たち 老渡世人の世直し群像劇

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映画「龍三と七人の子分たち」より(C)2015『龍三と七人の子分たち』製作委員会 配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野

 北野武監督ならではの機知に富んだ小ネタの数々に腹を抱える。前作の現代ヤクザの血みどろ抗争劇「アウトレイジ」シリーズから一変、本作では元渡世人たちの世直し群像劇を滑稽に映す。家族に疎まれ、老いと孤独にさいなまれても、生き方だけは曲げられない。義理や人情、仁義もなく、弱者を食い物にする半端者相手に、老体にむち打ち真っ向勝負を挑む。

 ウェブに発表したビートたけしの短編小説を基にする。息子家族と同居する主人公の元組長(藤竜也)は、振り込め詐欺の電話にだまされ、博徒(近藤正臣)と一緒に受け渡し場所へ。ところが受け子が2人の風貌に萎縮し退散。その後、街で寸借詐欺師(中尾彬)がチンピラに絡まれている所に遭遇。刑事(ビートたけし)が現れ、元暴走族集団が悪質商法や詐欺で荒稼ぎしている事を知り、昔の仲間を集めて組を結成する。

 ロケを多用したことで現代の空気感を物語に取り込む。組員誰もが家族に距離を置かれ、近所に友人もいない。主人公たちは無縁社会に異議を唱え、自分たちが作った渡世人の“暗黙のルール”を無視する半端者に制裁を下そうと勘案する。そして最後に一花咲かせようといきり立つ。チンピラを瞬時に蹴散らすド迫力のすごみ。修羅場を生き抜いた男の背中は曲がっていても頼もしい。

 とはいえ、しょせんはご老体。気合に反する弛緩(しかん)した動きが笑いを誘う。早撃ち(品川徹)の銃を持つ手は震えて乱射し、カミソリ使い(吉澤健)は自分のひげもまともに剃れない。ショートコントのようなシーンが効果的に練り込まれ悲壮感をかき消していく。平均年齢72歳のベテラン名優たちのボケとトボケのあんばいがよろしく、等身大の演技で絶妙な味わいを出す。

 老人たちの江戸っ子風の歯に衣(きぬ)着せぬ掛け合いや、世間ズレした感覚で巻き起こすドタバタ劇の数々。漫才師ならではの監督脚本、演出も見どころ。食品偽装問題や高齢化社会と時事ネタも盛り込み、終盤にアクションもあるなど、これまでの北野作品とは一線を画しており新鮮な印象を醸す。それでいて親近感も持てる痛快さ。多芸な監督にただ感服する。

 【メモ】15年日本。上映111分。全国ロードショー。