銀幕への誘い


狂気の師、雪辱の徒 セッション 魂揺さぶる孤高のドラム

  • 0
  • LINEで送る

映画「セッション」のマイルズ・テラー(左)とJ・K・シモンズ(C)2013 WHIPLASH,LLC.All Rights Reserved.配給:ギャガ

 薄暗い廊下に響くドラムの音。その独特のリズムは鬼教授の鼓膜を強振させ、奏者の青年は実力派バンドへと招かれる。そこは功名への近道であり地獄の入り口。スタイリッシュな画面に張り詰める異様な緊迫感が物語の先行きを不安にする。

 デイミアン・チャゼル監督は高校時代の体験を基に脚本を執筆。故に物語に説得力がある。ジャズドラマーとして活躍した青春時代。厳しい指導がトラウマになっているといい、その負のエネルギーを本作に昇華させた。「戦争やギャング映画のような音楽映画をつくりたい」と監督。完璧な演奏を追求するリハーサル室、ステージには殺気すら漂う。28歳で撮影したとは思えない魂を揺さぶる斬新な作品に仕上がった。

 アメリカ屈指の音楽大学に入学した主人公のドラマー青年(マイルズ・テラー)は伝説の鬼教授(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。狂気に満ちたレッスンに青年は没頭。人生をなげうち、はい上がろうとする。

 不条理極まる鬼教授のしごき。それは大人への通過儀礼の権化であろう。従って理由などない。わずかなミスで人格に人種、外見を罵倒しバンドから追放。苛烈な個人攻撃で生徒を恐怖で支配する。鬼教授のそり上げた頭に筋骨隆々の体、常に青筋を立てた威風堂々とした姿勢が指導者たる者の絶対的な自信を表す。

 室内を俯瞰(ふかん)する静的ショットに、激高する鬼教授と大汗流す主人公を大写しにするカメラワーク。スリリングなつながりがよろしく、監督の悪夢を再現しているようだ。横暴な指導に耐え、音楽家への野心をたぎらす主人公もまた常軌を逸する。自尊心を根底から覆された屈辱。練習中、スティックを持つ手の肉は裂け、うなり声があがる。恋人や家族を疎遠にして主奏者の座を手に入れるのだが、コンサートの道中で交通事故に。血まみれのまま立ったステージで非情な宣告を受ける。また、教授も行き過ぎた指導が密告され学校を去る。

 「愛と青春の旅立ち」(82年)で、軍学校の鬼教官から逃げた士官候補生は惨めな結末を選択した。通過儀礼に敗れた人間を映画は断罪してきたが、本作では簡単にピリオドを打たせない。舞台の主役を譲らない2人を音楽が接着剤の役割を成し、第2ラウンドへ向かわせる。狂気の師と雪辱の徒。プライドが激突するステージでどちらが喝采を浴びるのか?終幕のセッションにただ息をのむ。(廣)

 【メモ】14年アメリカ。上映107分。県内のTOHOシネマズ流山おおたかの森、都内のTOHOシネマズ新宿他、全国順次ロードショー。