「流れる遠近法」

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 現世はポピュラー時代ともいえそう。

 タレントは当然ながら、政治家でも学者でもアーティストでもお百姓でも、顔を売り、名前を売らなければ一流とはいわれない。野菜を買いにいくと、生産者の写真や名前が付いていたりするが、それでたまげる人は現世ではいない。

 ということは、私は現世向きではないらしい。いまも、ひっそりとした女流画家の水彩画に、ひっそりと魅せられている。

 松岡洋(ひろ)子さんは愛媛県松山市の出身で、松山市は松山城で知られる県中部の市ということだ。

 小学生時代、洋子少女の絵が先生の絵に似ていたことから、大好きな先生にほめられ、クラスメイトにももてはやされ、その才能とともに、貴重な「絵心」も育っていった。

 ひっそりとしたお人柄であっても、固有的作画のテーマは堅持していた。

 テーマは、まず「流れる遠近法」ということ。つまり近景と遠景が流れるようにつながっていくこと。

 このナチュラルな画法に対して「逆遠近法」という技法もあり、自然的な視覚とは逆に、遠景の立体を近景より大きく描く、例えば俯瞰図法(ふかんずほう)等もあるが、松岡さんは「流れるような自然遠近法」をテーマとし、その流れから逸脱することはない。

 松岡流次のテーマは「書き込んだすっきり絵」だった。綿密に、アレもコレも書き込んだデッサンに色を入れても、松岡式の水彩画法ではコテコテせず、淡泊でいて深みを増す。

 松岡さんは自然を写す水彩画家だが、さらに自然をイメージ化する作家でもあり、作品「人力車のある風景」は、画家のイメージにより人力車が(添加)された自然描写法だという。

 松岡洋子さんの「イメージ水彩画展」は、4月・5月と、T・清里氏のプロデュースで、市原市国分寺台中央、和食処「なつ味」の壁面をすっきり飾る。

 ※私事にわたり恐縮ながら、昨今病院通いが急となり、読者皆様に守られて半世紀近く続いたエッセーの筆を、いったん置かせていただくことになりました。感謝とともに、今後の日報への応援をお願いいたします。

 =おわり