読者文芸(2017年3月12日)

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日報俳壇 水見壽男選

野田市 渡辺孝夫
暗がりの若水を汲む撥釣瓶
 【評】元朝に若水を汲む釣瓶(つるべ)の躍動感が伝わってくる。一年の邪気を払う神水を撥釣瓶で汲む。その動作に、重い心が通う。ここには日本人の歴史の中で培われた国生みの歴史があり、二十一世紀の今に、残る。日々の安穏を祈る新年最初の俳景である。

匝瑳市 椎名貴寿
縁側は私の書斎日向ぼこ
 【評】巧みな生活の上手な部屋割りの生き方、住まい方である。縁側はそもそもお日様との交流の場であり、生活の種々の交流の場でもある。そこを書斎の一角に設い、夏は風通しを活用し、周年を書斎としての使い方は、知恵者の功用。句の視点も巧みである。

日報柳壇 永藤我柳選

茂原市 福田研治
天下り噴きだし口は文科省
 【評】天下り問題で騒がれたのはズッと以前の事と思っていたが…。未だに根が残っていたのか、今度は教育の大本山である文科省から発生した。手の入り組んだ策で多方面に広がってから発覚。国会で絞り上げられ結局は辞任に追い込まれたが、まだ掘り起こせば他の省庁にもあると国民は思うだろう。原句は、憤りでさえ川柳らしい軽妙な語り口のウガチが妙。

八街市 緑川安英
十九年振りの横綱国が沸き
 【評】外国人力士でも日本の角界に入ったからには日本人と差別的に考えるべきではないと思う…。それでも日本出身の横綱が二十年近くも出なかった事は、本音を言えば、国技なのにどこか淋しかったはず。今回の稀勢の里では国中が喜んだ。これからも相撲人気で頑張って欲しいと、作者も願っての事と思う。

日報歌壇 大島史洋選

いすみ市 安藤敦子
綿棒を持てば擦り寄り耳掻けとねだりて吾の膝に伏す犬
 【評】愉快な歌です。ずいぶんと幸せな犬ですね。ま、飼い主もこれで癒やされているのかもしれませんが-。

木更津市 草井笑子
手作りのクリスマスツリー孫が見てセンスが良いとほめて帰りぬ
 【評】もうかなり大きなお孫さんなのでしょうか。祖母の作ったクリスマスツリーを、みんなで楽しく見ているようすが伝わってきます。

日報学生歌壇 下平武治選

柏市 天野弥生
青空の真下にそびえる薬師寺西塔レンズの向こうで歴史を伝え
 【評】晴天の日に奈良市西ノ京にある薬師寺を訪れ、復興された鮮やかな西の塔を見上げた作者。真っ青な空に向かってそびえる塔に向かってカメラを構えたその瞬間、レンズの中の塔に歴史の重みを感じたのでしょう。

船橋市 川崎栄子
枯れ枝の上をチョコチョコ飛び回る二羽の小鳥の囀りを聞く
 【評】暖かい日射しに誘われて庭先の木の枝を飛び回っている二羽の小鳥。作者はその様子を窓越しに見ているのでしょうか、その小鳥達の囀(さえず)りが聞こえてくるという。のどかで静かな様子が伝わってきます。

日報詩壇 中谷順子選

魂の行方
 八千代市 星清彦
肉体は腐敗し
朽ち果てる運命にある
骨は
骨は存在の
リアリズムである
ならば魂は
魂は明るい野原を渡る
風であろう
あるいは自由な翼を得た
感情でもある筈だ
肉体と骨と魂と
やがてそれらは風化し
視界からも消滅するが
むしろひとつの鋭気となり
風に乗り翼羽ばたかせると
軽々と何処までも
飛び廻るのであろう
 【評】「骨は存在のリアリズムである」の言葉に存在を追及する詩人の鋭さを感じます。

■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。