読者文芸(2016年10月23日)

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日報俳壇 山中葛子選

千葉市 斎藤かよ
秋燈や拡大鏡の欲しくなり
 【評】ひんやりと澄んだ“燈火親しむ”の候。まだまだと読書を楽しむ最中に、視力の衰えが感じられる「拡大鏡が欲しくなり」の身体感覚のあざやかさ。読み残したページへのわくわくする期待の挑戦が乗り移っている佳境なのだ。

成田市 香取道夫
オルガンの一鍵鳴らず桐一葉
 【評】音の出なくなった鍵盤(けんばん)が一つある古びたオルガン。機能しなくなってしまった「一鍵」が人生観の寂しさを呼びおこしている秋の訪れ。大きな一葉が落ちる音で秋を感知する「桐一葉」の季語に象徴された心象風景のあざやかさ。

日報柳壇 永藤我柳選

千葉市 鈴木正義
地球より重い時代に戻したい
 【評】今や世界は殺伐としたる世の中になり、テロや殺人事件等で紙面を賑わさない日が無いほどだ。それだけ人間の命が軽んじられてきたという事なのか。たった一人の命でも、地球の重さより重いものだと言われていた頃がウソのように思える。原句もそんなところをウガって見たかったのだろう。ウイットがあり潜みの利いたマトメが妙。

市原市 布施昌子
綿ぼこり付けてゴキブリ自主をする
 【評】ふだん掃除の行き届かない所までゴキブリが這い、綿埃にまみれた姿から戒められている気がするもの。本来、ゴキブリ自体はさほど害も無く単なる昆虫に過ぎないが、悪いのは不潔な汚い所を歩き廻り、体に付けてくる黴(かび)菌が害を及ぼすので嫌われるもの。原句の、ゴキブリの自主というフレーズに皮肉られているような面白みがあり笑える逸句だ。

日報歌壇 大島史洋選

茂原市 牧野昭
台風が過ぎたる朝の田を巡るびっしょり倒れし稲に術なく
 【評】今年は多くの台風が各地に被害をもたらしました。この歌、「びっしょり倒れし」という表現に工夫があると思いました。

いすみ市 佐藤幸子
白鷺に雀・鴉・鳶もいる刈田の賑わい台風近づく
 【評】刈り入れの終わった田に、餌を求めていろんな鳥たちが集まってきている。台風も近づいている。活気のあるような、また、不安が漂うようなひとときです。

日報学生歌壇 下平武治選

野田市 松永祐香
夏の夜に広がる花火の輝きは水面に落ちた絵の具の広がり
 【評】夜空に打ち上げられ開き広がる花火の輝きは、水面にぽとりと落ちた絵の具が広がっていく様と同じだと言う。新しく面白い感じ方で、作者の感性がよく出ています。

流山市 櫻井晴菜
「今年こそ」と強く意気込む読書の秋数分後には本は枕に
 【評】今年こそ沢山の本を読もうと決意して本を広げた作者。ところが本を開いた数分後にはその本が枕となってしまったと。意気込みとは裏腹の結果に落ち込んでいる作者の気持ちが伝わって来る歌です。

日報詩壇 中谷順子選

ぽっかり雲
 木更津市 渡辺元弥
とある丘
登ったら
牛がいた

牛と雲を見ていた
風の強い日だった

雲はいつまでも
ひとっところに
浮んでいた

牛が
モーと鳴いた
私も
モーと泣いた
それだけの一日
 【評】「おーい雲よ、ゆうゆうと馬鹿にのんきそうじゃないか…」山村暮鳥の詩を思わせる作風。牛と雲の取り合わせがのんびりした様子を奏でていて見事です。

■投稿規定
▽俳句、川柳、短歌、学生短歌は、はがきに五句以内。詩は原稿用紙を使用▽はがきには、それぞれ「短歌」「学生短歌」「俳句」「川柳」と記入すること▽作品は毎月第2、第4日曜日の読者文芸欄に掲載します▽作品には投稿者の郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を明記のうえ、〒260-0013 千葉市中央区中央4-14-10 千葉日報社文化部読者係までお送りください。メールでの投稿は受け付けておりません。