忙人寸語

忙人寸語(2017年3月15日)

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 「事実を積み重ねて、真実を追求するのが新聞記者」。30年前の新人時代、「現場第一」と併せて上司や先輩からたたき込まれた

▼「『一を知り、十調べて聞いて、百の取材』。原稿は要約すること」も指導された。事実の報道はできても真実の追求は難しい。事実は伝える側の視点や立場によって異なる。さらに意見や見解となると千差万別で、取材の厚みの大切さは今も実感する

▼「ポスト真実(Post truth)」の現象が危惧されている。「客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」で、「ポスト真実の政治」だ。トランプ米大統領の誕生で言葉が広まる

▼政権に都合の悪いメディアの報道に対し、政府高官が「もう一つの事実」として広報する“事実のコントロール”は、不安と恐れで混迷をさらに深める

▼東大名誉教授の姜尚中(かんさんじゅん)氏は、「ポスト真実」の講演で「デモクラシー(民主主義)のインフラが危うい」「ビジネスと軍事で極端に動く」と憂慮する。国内でもIT大手のサイト情報(記事と写真)に盗用や著作権侵害の疑いが判明し、ネット情報の信頼性が問われている

▼「今こそ新聞の時代。取材(調査)、選択、分析に価値を付けて記事にし、論を張るべき」と姜氏。「矜持(きょうじ)を守り、真実を地道に明らかにしていくことが重要」。その使命に新聞は応えたい。