忙人寸語

忙人寸語(2017年3月1日)

  • 0
  • LINEで送る

 英国のミステリー作家、ロバート・ゴダード氏の近作「謀略の都」(講談社文庫)が発刊された。第1次大戦後の世界各地を描いた「1919三部作」の1部で、パリを舞台にした諜報小説だ

▼戦後処理を優位に進めるため、戦勝国が虚々実々の駆け引きを繰り広げる中で、父の死の謎を追う主人公が陰謀に巻き込まれていく話。スピーディーで巧みな展開に引き込まれる

▼海外作品は、上質なシリーズでも売り上げが伸びなければ、新作が出なくなるのが今の出版業界。その中で、ゴダード氏はシリーズ物がほとんどないのに、新作がしっかり翻訳される数少ない作家の一人

▼「謀略の都」には、戦勝国として日本の代表団が登場する。主人公を助ける側で、紳士的な人物が描かれているが、近日発刊される2部には敵役も登場し、3部は日本が舞台になるという

▼二つの大戦を挟む大正時代は、日本が欧米列強に肩を並べるべく奮闘していた時代。急速に台頭してきたアジアの新興国が、世界にどう見られ、どう扱われていたのか。ゴダード氏が第2次大戦前の日本をどのように描くか、興味は尽きない

▼敗戦から立ち直り、屈指の経済大国に登り詰めながら、世界での発言力は決して高いとはいえないのが現代の日本。大正時代の方が、存在感が大きかったと感じるのは、軍事力だけが理由だったのか、と考えさせられる。